舞台と読書と、ときどきひとりごと

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ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』感想

シアタークリエで上演中のミュージカル『ビッグ・フィッシュ』を観てきました。

 

原作は2003年に公開されたティム・バートン監督の映画。この作品、個人的に実はつい最近観たばかりだったこともあって、上演を楽しみにしていました。

 

ほんとうに、想像以上に良かった!

ストーリーを推進させるのは、父エドワードの想像の世界。想像の世界というのは、息子のウィルが毛嫌いしていたように「嘘」でしかないのかもしれません。しかし、エドワードがそれを生きがいにして、彼に関わる人たちを笑顔にしていたように、「偽物」「本物」の二元論では語りきれない真実がそこに宿るのだと思います。そして、その真実は、過去を彩り、未来を作っていくことができるものになるのでしょう。エドワードのお葬式に本当に「のっぽ」が来てくれたように、彼の作った物語の続きを、ウィルが描いたように。そして、「ビッグ・フィッシュ」として物語の世界の中でエドワードが永遠に生き続けることができるようになったことで、語り継がれる物語が生まれるのだと思います。それは、きっとウィルや、その子がこれから生きていく未来を、きっともっと豊かにしてくれるはずです。

 

現代社会は、やらせ問題が表面化するたびにたたかれるように、「本物」ではないものが「悪」とされる風潮があります。確かに、フィクションは究極の「嘘」であり、それは現実離れしていて、現実なんて変えてくれないように感じるかもしれない。しかし、そこで描かれる嘘は、時に「本物」以上に今生きるこの世界を彩ってくれることも、あるいは生きていける理由を作ってくれることもあるのです。

 

ミュージカル版は、映画版では描かれていたシーンがカットされていたり、別の人物の設定が違う登場人物に付与されていたりと違いが結構あります。映画のようにいろんな場所を行ったり来たりはできないし、いろんな人を12人のキャストだけで演じている(基本川平さん以外全員バイトしている)ゆえの不完全さも、限られたスペースという制約もあるけれど、より本作のテーマが色濃く出ているように感じました。奥に川(湖?)があり、あとはがらんとしているという基本の舞台セットが、エドワードのお話の世界を再現するごとに入れ替わり立ち代わり登場しては消えていくというのが「想像」を表現するのにはぴったりで、さらに常に水を表現する空間があるというのも「あの世とこの世」だったり、「想像と現実」だったり二元論的なものを流していくという展開?にも沿っていてとっても良かったです。

 

果てしない愛と、希望の物語でした。