舞台と読書と、ときどきひとりごと

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雪組「壬生義士伝」物語&キャスト別感想

雪組さんの「壬生義士伝」の感想です。

(長くなってしまったのでMusic Revolutionのほうは別に…)

 

 

作品感想

今回、たまたまムラに行く機会があり、宝塚で1回、東京で1回と2回観劇することができました。初日からまだ数日しかたっていないタイミングと東京とでいろいろ変化していて、舞台は生ものなのだなぁと実感した次第です。

「泣ける」作品だが…

キャストの皆さんの熱演もあり、すすり泣きされている方も多かったです。ただ、いかんせん長編の原作をまとめた作品ということもあり、展開が早い。また、時代経過や内紛がものすごいスピードで描かれるので、時々理解しきれずに進んでしまった部分もありました。ただ、語り手(凪七さん)たちがいることによって(確かにあそこの部分は「お芝居!」感はあったけれど)、死の印象が強い作品も和んだ気がします。

娘役さんの出番が…

残念だったのは、娘役さんの出番が少ないこと。いかんせん男社会の話、トップ娘役ですら2役演じているのですから、なかなか難しいのだと思います。ただ数少ない娘役の出番・芸者の登場シーンが美しくあでやかで、さすが雪娘でした。あと雪ん子もかわいかった! 

キャスト別感想

望海風斗さん(吉村貫一郎

吉村嘉一郎は「弱そうに見えて、実は強い」人。それは、守るべきものがあり、そのためには何としても死ぬわけにはいかないから。武士のイメージとは違う、宝塚の作品にしては珍しい役柄です。

だいもん(望海さん)もあえてオーラを消しているのか?と思うシーンもあって(組子にお酌をしているシーンとか)。それでもやはり、求心力がある不思議な魅力をきちんと出していらして、さすがトップだなと感心してしまいました。死に向かって走っていく様子が痛々しくて…。だいもんを苦しませたくなる演出家の先生方の気持ちもよくわかる(違う)

最後のシーンのすがすがしさに救われました。

真彩希帆さん(しづ・みよ)

吉村の奥さんであるしづは、家族を守るために脱藩した夫である吉村のことを待ち続けながら、いじめにあいながらも子どもたちを守りぬく強く美しい女性。そして、みよは商人のわがまま娘で、吉村のことを好きになりながらも彼の幸せを願い身を引く女性です。

「吉村のことを想う女性」でありながらも、全然違うキャラクターの2人ですが、きぃちゃん(真彩さん)はしづをしとやかに、みよをいじらしく演じることで見事に演じ分けてたと思います。

個人的にみよと吉村のほたるのシーンが好きです。「ほたる来い」とつぶやくみよの声が本当に切なくて…。彼女には幸せになってほしいなぁと感じました。

彩風咲奈さん(大野次郎右衛門)

大野は吉村の親友で、足軽から差配役まで出世した人物。吉村のことをずっと気にかけてくれているいい人です。

最初は2番手さんのお役には思えなかったのですが、最後まで見ると、やはりさきちゃん(彩風さん)だからこそのお役なのだと思いました。南部藩を守るという仕事としての使命を全うしつつ、母や無二の友を思うやさしさや、包容力がある魅力的な人物造形になりえていたのはさきちゃんの魅力なのだと思います。

彩凪翔さん(土方歳三

新選組の副長。「めんどくせぇ」が口癖ながら、全然面倒くさがらずに隊士と向き合い沖田をはじめとしたくせ者の隊士から信頼されています。

あんなかっこいい人があんな役やったらかっこよくないわけないです。けだるげだけど、根はまじめで他者にも優しい。すごく魅力的な人間として描かれており、素敵でした。あと個人的には写真撮影の時の副長がめちゃくちゃ好きです(あのシーン、見所多すぎてオペラがフル稼働だった)

同期であるまなはる(真那春人さん)演じる局長・近藤勇とも、同期ならではの息のあったコンビで素敵でした。

朝美絢さん(斎藤一

斎藤は新選組の中でも随一の剣豪。部下の池波(縣さん)とともに明治維新の時代を乗り越え、松本先生(凪七さん)らに吉村のことを伝える役割を担います。

つかみどころがなく、死ぬことを誰よりも恐れている吉村のことを「嫌いだ」と言いつつも、守るべきものがあるからこその図り知れない強さへの畏怖を感じ、そして最終的には生き残ってしまったものとして吉村の物語を伝えるという重要人物。

え、めっちゃ主役級では…?というほどの大活躍でした。

FNSでも騒がれてましたが、あーさ(朝美さん)はやはり美しい…。ですが、個人的にあーさの魅力は、そのきらきらはもちろんですが、月組育ちらしい演技力だと思っています。美しさの中に、吉村に対する複雑な感情が入り混じるのがきちんと表現されているように感じました。

その他のキャスト

凪七瑠海さん…吉村たちの時代には直接かかわらないけれど重要なお役。物語の重要なアクセントとして、専科さんとしての実力を発揮されていたと思います。

永久輝せあさん…先日花組への組替えが発表されたばかりの若手スターさん。病弱で温和そうに見えて、怖いことをさらっといい、底知れぬ怖さのある沖田というキャラクター像を魅力的に演じてました。登場シーンの銀橋渡りで一番上のパートを歌っていらっしゃったと思うのですが、若手スターだ!というオーラが出まくっていました。

透真かずきさん…「あの時代の人」としての説得力が半端なかったです。佐助さんの人生が透けて見えるというか、きっと誠実に、日々の生活を大切に過ごしてきて、吉村と大野も幼いころから見守ってきてくれたんだろうなぁというのがわかる造形で。役者だと思いました。

まとめ

原作ものかつ宝塚にしては異色(?)の作品ではあったものの、日本物の雪組らしく見ごたえのある作品でした。

涙も吹き飛ぶ、全力疾走、テンション爆上がり!なショー「Music Revolution!」の感想はまた後日書ければと思います…